絶叫フェスティバル

7月22日(土) 晴れ

フラフェスティバル本番の日。
この日のために1年間、ただ1曲だけを練習してきた。
3分少々のためにドレスと飾り3万円、チケットと出場料で1万、1年間のレッスン料と謝礼が7万。
趣味にはお金がかかるとしたものだけど、3分少々に11万をぶち込む景気の良さは気分がいい。

そういえば、介護の必須の7つの「気」は、
元気、陽気、勇気、景気、男気、やる気、根気。
トイレで読んだ本にそう書いてあった。
7つをそらんじている自分、まだ認知症ではないかも。

さて、晴れ舞台の朝、朝の静けさの中でマニキュアを塗ろう。
ピンク系のキラキラ三段重ねで決めよう。
まばゆい照明の中でエレガントにエモーショナルに踊ろう。
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いや、その前に畑の様子を、が間違いの始まり。
4月に植えたキュウリが今を盛りにみずみずしい。
でも、草ぼうぼう。
ええいままよと草刈り機で刈り倒す。
出番は16時10分だから午後からでもいいし。
バリバリ刈っているとエレガントな自分のイメージが崩れそう。
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会場の駐車場は混むから近場に置かせてもらってタクシー2メーターで行こう。
近場に届ける花も用意した。
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そこへお嫁さんがやって来た。
会場まで送迎してくれるというので、しばらく考えてからお願いすることにした。
1歳3ヶ月の赤ちゃんと一緒に送迎とはリスクが大きい。
でも、せっかくの申し出だし、自分も彼らの送迎はしているし、ここは助け合いで行こう。
13時に出発した。
ところが、赤ちゃんは眠いタイミングを逸して声を限りに泣き叫ぶ。
泣き叫びすぎて呼吸が怪しくなったのでチャイルドシートから下ろした。
でも泣き叫ぶ。
県下で一番大きい警察署の前を通る時も水中でシンクロやっているみたいに脚を放り上げて泣き叫ぶ。
諦めないで泣き叫び続ける根性は見上げたものだが、これからエレガントに踊る自分にとっては脳みそを掻き回されるような衝撃になる。

会場を通り過ぎてスーパーの屋上駐車場で泣き叫ぶのをお嫁さんに渡した。
チャイルドシートに固定して泣き叫ばせながらお嫁さんは帰っていった。
会場まで歩くと結構遠い。
ガンガン照りつけるし、メイクも流れてしまう。
頭の中は泣き叫ぶ声がこだましてエレガントな自分を完全に失っている。
やれやれ。

会場では華やかなハワイアングッズを売っている。
少し見て回ったが気分が落ち着かない。
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ステージでは次々に踊っている。
朝10時半から17時過ぎまで2日間、途切れなくステージが続く大がかりなフェスティバル。
玉石混淆だがそれぞれに楽しめる。
自分、あまりステージを見ないようにしている。
それぞれの個性にシンクロしやすいのか見ているうちに自分の踊りが変質するように思える。
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3人での踊りが始まった。
この3人はこの団体の頂点の指導者でその他の先生方はこの3人から習っている。
指導者でありこの組織の社員であるとアナウンスがあり、踊りが始まった。
3人とも努力によってあるレベルに達しているが生まれ持った光る才能は感じ取れない。
でも、群舞は個人の才能よりいかに揃っているかが大切なので、一糸乱れぬ踊りが素晴らしいのだ。
そういう意味で3人の努力に敬意を表する。

と、左の一人が明らかに繰り返しを間違えた。
間違えたという驚きの表情をし、立て直すまでに何度か間違えた。
さすがに苦笑しながら踊っている。
これは、つらい。
見ている方もつらい。
思わずああっと叫び声が出た。
知らない先生だが、可哀想で泣きそうになった。
踊る前にこういうのを見るとダメージになる。

出番が近くなり楽屋で着替えをした。
今年の衣装は黒と白で赤い差し色がある。
飾りも小さい。
最近のギラギラ衣装と大盛りの飾りに逆行しているが曲には合っている。
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順番が来ると舞台裏を通って出る側に移動する。
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自分、ここで踊るのは10曲を超えておりあまり緊張はしない。
でも、今回は何か調子が狂っていて自信がなく不安になった。
不安になっても本番に強いのが長所ではあるが、この舞台は不安では乗り越えにくい。

ステージに並び、曲が流れ出す直前に友人が私の名前を叫んだ。
4000席ある会場に響き渡った気がした。
名前を絶叫し、見に来ているよーと叫んだ。
ハッと右手を見ると数名が手を振っていた。
正面を見るとはるばる泊まりがけでやって来た友人たちが立ち上がるようにして帽子を振っている。
一瞬だったが、集中力が殺がれた。
前奏の4ステップの手を間違えてしまった。
すぐに立ち直れたのは幸いだったが痛恨の出来事だった。
歌舞伎などでは掛け声のタイミングを間違えないようにほとんどが専門の大向こうが掛けるが、ほんと、タイミングを間違えると事故にもつながりかねない。

でも、間違えたのは、誰のせいでもない。
自分が未熟者だ。
こんな自分を遠くから来て、ホテルに泊まってまで応援してくれた友人たちに感謝の気持ちでいっぱいになる。
また、一番目立つ中心の位置で踊らせてくれた先生に申し訳なく、思い返すと大声で叫んでしまいそうになる。
ステージは続いていたが、逃げるようにスーパーの駐車場に行った。

約束の時間にお嫁さんの車が来た。
赤ちゃんはまた絶叫している。
家に着くまで大声で泣き叫び続けて、着くとお嫁さんに抱きついて恥ずかしそうにした。

君も大きくなってステージに立つ時が来たなら、舞台をなめてはいけないよと言ってあげたい。
朝から、草刈りなどしないで、気分を落ち着けて、イメージトレーニングして、万全で臨みなさい。
何事にも動じない集中力を身に付け、悔いのない結果を出しなさい、と。

タクシー代4000円浮いたから美味しいものを食べに行こうねと言うと、お嫁さんはとても嬉しそうにした。あの泣き叫ぶ中で運転したお嫁さんも大変だっただろう。
有り難いことだと思う。

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